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【3/8最終局面】性犯罪刑法改正検討会 17名の委員それぞれの主張・経歴

刑法性犯罪改正検討会の委員

もしも性暴力被害に遭ったら

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3月8日に向かえる第13回目の性犯罪における刑法改正検討会。
この委員として選出されている17名は、どのような立場から、どのような意見を述べてきたのでしょうか。
議事録から簡単に、各委員の主張、経歴をまとめました。
議事録を全部見るのは大変という方も多いと思います。この記事で簡単に、各立場の主張、争点が分かればと思います。

 

目次

そもそもどんな改正が検討されている?

 

検察での聴取

 

性犯罪に関する刑法について、2017年に約110年ぶりに改正がされたことは、ご存じの方が多いかと思います。

2017年の改正によって、強姦罪が強制性交等罪へと罪名変更となり、重罰化されたり、刑の対象となる行為の範囲が広がりました。しかし改正された現在の刑法でも、すべての性暴力が、性犯罪として認められ裁けているわけではありません。

 

2017年の刑法改正の際、3年後に再度内容を見直すという付帯条項が付けられての改正となり、2020年はその3年後見直しに当たる年でした。
現状裁くことのできていない性暴力を、性犯罪と認めることができるように、昨年からの検討会で要件見直しがなされています。

 

主に被害者側が望んでいる改正が以下の点です。

 

・同意のない性交を性犯罪とする「不同意性交等罪」を作ること

・性的同意年齢を現状の13歳から16歳に引き上げること

・公訴時効の撤廃

・起訴状における被害者の氏名秘匿

・刑事手続き、司法面接の負担減

・地位関係性を利用した性犯罪の適応範囲を親以外にも拡げること(兄弟、上司、指導者、教師等)

 

刑法改正検討会って?

 

こういった刑法に残される課題に対処するために、17名の専門家で構成されたのが、刑法改正検討会です。
2020年の6月から検討会がスタートし、2021年1月現在までに11回の会議が行われています。
委員の内訳は以下のようになっています。

 

刑法学者・・・ 8名

被害者側医療関係者 ・・・2名

加害者側弁護士・・・ 2名

被害者側弁護士・・・ 1名

被害当事者・・・ 1名

警察関係者 ・・・1名

検察官・・・ 1名

裁判官 ・・・1名

 

 

各委員の経歴と特に関心のある論点

 

検討会当初の自己紹介にて、各委員が述べていた主張や特に関心を持っている論点をまとめました。

 

井田良 委員(座長)

 

【経歴】刑法学者。今までの刑法改正検討会でも委員を努められていた。

 

【関心のある論点・意見】

より効果的な被害者保護を可能とし、かつ無罪推定の原則をはじめとする伝統的な刑事法の基本原則をゆるがせることのない、新たな性犯罪処罰の在り方を模索したい。

 

池田公博 委員

 

【経歴】刑法学者。刑事訴訟法が専門。2017年刑法改正時に先だった調査審議に関わった経験有。

 

【関心のある論点・意見】

・公訴時効の撤廃

・刑事手続きでの司法面接の位置づけ

・起訴状での被害者氏名秘匿制度の創設

 

金杉美和 委員

 

【経歴】弁護士。被害者側・加害者側共に担当。企業でのハラスメント相談等を被害者側で手がける。

 

【関心のある論点・意見】
早期証拠保全、二次被害防止等、被害者保護施策は為されるべきと思うが、暴行脅迫要件の撤廃、不同意性交等罪創設には反対。
被害者支援の充実や性教育の拡充に先に取り組み、それから刑法改正で良いのではないか。
被害者心理の理解など、刑法改正よりも先に取り組むべき課題が多い。
刑法改正をした際の実効性への疑問有り(本当に改正で処罰される事案は増えるのか)

 

上谷さくら委員

 

【経歴】弁護士。被害者支援専門。数多くの性犯罪被害者の支援弁護経験。

 

【関心のある論点・意見】

・起訴状の被害者氏名秘匿への改正。

・検察官への性被害対応の研修が必要。警察検察の司法面接や被害再現、裁判等での被害者負担に対する量刑の低さを問題視。

・性被害に対応できる医師を増やす必要。被害者はきちんと対応をして病院に行ったのに、証拠を残してもらえないケースがある。

・警察、裁判官にも現場教育、研修が必要。

・性暴力被害へ対応する支援者のリソース不足が深刻。支援者の生活も安定させなければ、持続的な支援にならない。

・改正だけでは問題は解決されない。支援、被害者の実状理解と共に議論されていくべき。

 

川出敏祐委員

 

【経歴】刑法学者。2011年から犯罪被害者等施策推進会議の専門委員を務める。

 

【関心のある論点・意見】

・暴行脅迫要件撤廃については議論が必要

・公訴時効については以前に議論参加し、課題感有

・司法面接での被害者証言が、裁判証拠として不採用にされる問題(年少の被害者への負担大)

・被害状況記録媒体の没収措置の問題(加害者が被害者への性暴力の様子を撮影していた場合、有罪でないと没収できないのは問題)

 

木村光江 委員

 

【経歴】刑法学者

 

【関心のある論点・意見】

・監護者性交等罪の適応範囲の拡大

・不起訴率の上昇への非親告罪化の影響について、実態調査が必要

 

小島妙子 委員

 

【経歴】ジェンダー法学会理事

 

【関心のある論点・意見】

・暴行脅迫要件の撤廃

・公訴時効の撤廃

・監護者性交の適応範囲拡大(地位関係性を利用した性犯罪の創設)

・配偶者間の性暴力も罰されるように規定必要

・性的同意年齢の引き上げ

 

小西聖子 委員

 

【経歴】精神科医。PTSD等の被害者臨床専門。2012年から性暴力被害者支援センター(SARC東京)と連携した性暴力被害者の鑑定を行う

 

【関心のある論点・意見】

・性暴力の実情と司法認識に乖離がある。それが理解されることが重要。

・被害者心理、実情に沿った暴行脅迫要件の撤廃検討

・不同意性交等罪についてはどのように扱うか議論必要

・性的虐待について、被害者心理に沿った監護者性交等罪の見直し

・被害に遭った地域、当たった専門家の知識のばらつきによって、同じような事例が起訴になったり不起訴になったりするのはあまりに問題がある。認識を揃えていくことが大事。

 

斎藤梓委員

 

【経歴】臨床心理士。公認心理士。被害者支援専門。PTSD治療、犯罪被害者心理研究。

 

【関心のある論点・意見】

・暴行脅迫要件、地位関係性の中で起こる被害の実態に即した改正希望

・親族からの子どもの性被害。監護者性交等罪の適応範囲、公訴時効の見直し。

・手指及び器物挿入への罰則問題(女性が加害者の場合など、強制わいせつ罪になり罪が軽い)

・男性、セクシャルマイノリティの被害。見える被害でしか議論がなされていない。偏見や認識不足が多く支援が充分に届いていない。啓発が必要。

 

佐藤陽子委員

 

【経歴】刑法学者。刑法専攻、性犯罪も研究テーマの一つ

 

【関心のある論点・意見】

・暴行脅迫要件の撤廃可否について。処罰範囲を明確化する必要有

・性的同意年齢引き上げについて。中学生同士の恋愛まで裁くことのないように議論必要。

・精神障害、発達障害がある人を保護することのできる制度の創設

・公訴時効の一時停止

・起訴状の被害者氏名秘匿制度創設(加害者防御権への影響も考えて検討)

 

中川綾子 委員

 

【経歴】裁判官。刑事裁判を主に扱い、裁判員裁判対象の性犯罪事件も担当。大阪地方裁判所部総括判事。

 

【関心のある論点・意見】

・裁判での被害者負担軽減のための制度を利用し、今までも性犯罪被害者の保護に留意して事件を扱ってきた

・被害者が登壇する講演会なども開き、意見を踏まえながら司法手続きをしているが、課題があることを調査報告で痛感。

 

橋爪隆 委員

 

【経歴】刑法学者。以前の性犯罪に関連する法制審議会にも幹事として参加。

 

【関心のある論点・意見】

・現在の暴行脅迫要件、抗拒不能要件で、処罰に値する行為が正当に捕捉されているか検証が必要

・被害状況の撮影について、それ自体を罪とすることができるか、データの消去や没収措置についても検討必要

 

羽石千代 委員

 

【経歴】警察庁刑事局刑事指導室室長

 

【関心のある論点・意見】

・性犯罪は警察として、殺人と並ぶ重大犯罪と位置づけて捜査している

・起訴状や捜査段階での氏名秘匿について、被害者の負担をできる限り減らしたい

・捜査関係者が適切な判断ができるように、刑法は処罰範囲が明確であることが望ましい

 

宮田桂子 委員

 

【経歴】弁護士。性犯罪において加害者側弁護を担当。被害者側の刑事告訴相談も受け持つ。

 

【関心のある論点・意見】

・弁護士は犯罪の証拠集めができないため、加害者側が犯行を「やっていないこと」を証明するのは難しい。そのため加害者側に「やっていないこと」を証明させる必要のある法律は問題。

・現行法を改正しなくては加害者を処罰できないのか。既に暴行脅迫要件は緩和されている。明確な脅迫がなくても有罪になっているケースはある。暴行脅迫要件が緩和されて有罪になっている事例についても検討すべき。

・被害者支援施策として、刑法改正よりも前にできることがある

・再犯防止措置ついての検討

 

山本潤 委員

 

【経歴】被害当事者。一般社団法人Spring代表理事

 

【関心のある論点・意見】

・前回の改正以降も、暴行脅迫要件によって裁くことのできない性暴力がある

・海外の例を参考に、不同意性交等罪を創設できないか

・公訴時効の撤廃/停止

・監護者性交等罪の適応範囲の見直し、地位関係性を利用した性暴力に関する議論

・配偶者間の性暴力を訴えやすくする制度作りの必要性

・前回改正時に無くなった「集団での性暴力」に関する規定を再度する必要

・性交同意年齢を16歳未満までに引き上げ

・刑法条文で何を性交と定義するかの見直し必要(器物や手指の挿入でも精神的ダメージは甚大)

・デジタル性暴力への規定必要

・性暴力に関して、社会が解決できない問題を、個人が請け負っている状態はおかしい

 

和田俊憲 委員

 

【経歴】刑事実態法研究者

 

【関心のある論点・意見】

・性暴力を、単に性的自由の侵害に対する罪ととらえるのではなく、家父長制ミソジニーに基づいた人格侵害という実情的に沿った点で、より重大な罪としてとらえるべき

・性暴力を単なる性的自由の侵害以上に、人格への罪ととらえると、現行法で間隙が生じている「地位関係性を利用した性暴力」を裁くためには3つの方法があると考える。

 1.上下関係の類型を追加する

 2.既存の上下関係の類型について,その守備範囲を拡張する

 3.上下関係の類型として漏れが生じることは諦めて,上下関係は要求せず同意の不存在だけを要件とする純粋な性的自由侵害罪 (不同意性交罪・不同意わいせつ罪)を軽い犯罪類型として新設する

 

渡辺ゆり委員

 

【経歴】検察官 性犯罪事件も多く扱う

 

【関心のある論点・意見】

・性犯罪事件では、加害者が「同意があると思っていた」等と主張することが多くあり、密室で起きる性犯罪のような事案に対し、捜査を尽くしても証拠に基づく合理的疑いを超える立証をすることに難しさを感じている。現場の検察官も事件処理に悩みを抱えている。

・捜査聴取、公判での証言等でかかる、被害者への精神的負担の大きさを実感。自身が対応に当たる中で、年少の被害者への精神的負担について特に問題視している。

・検察官による適切な事件立証のために、犯罪の構成要件については明確、客観的に定めることが望ましい。

 

 

以上で見てきた17名の委員を刑法改正への立場として見ると、以下のようになります。

 

刑法改正に反対、慎重派 2名

実務担当者等中立的立場 10名

刑法改正推進派(被害者側) 5名

刑法改正検討会の委員構成

 

各委員の意見を単純に分けることは、厳密には不正確ですが、それぞれの経歴、普段担当していらっしゃる立場で分けると以下のように捉えることができます。

今回の刑法改正検討会の委員には、被害当事者として一般社団法人Springの代表である山本潤さんが入っていることで、大きな話題になりました。刑法改正のうえで、当事者の意見が入ることは重要なことです。

 

委員の方々は、性暴力の問題に様々な立場で関わってきた人たちなので、検討会が終了した後も、それぞれの活躍や情報発信に注目です。

 

「不同意性交等罪を作ってください」署名

 

この刑法改正検討会も3/8で大詰めを向かえています。
今回の刑法改正検討会で、性犯罪における現在の「不」が、少しでも解消されるような結果がもたらされることを願ってやみません。

各市民団体、NPOなどで構成された「刑法改正市民プロジェクト」さんが緊急署名をしていました。
3月上旬で一旦提出をするとのこと。

不同意性交等罪を作ってください 署名

 

同意のない性交を性犯罪として認めてほしい、現状の仕組みでは裁かれない性暴力をなくしたいと、賛同の意を持ってくださった方は、ぜひ署名にご協力ください。あなたの声が力になります。

#同意のない性交を性犯罪に でSNSでシェアしてくださるとさらに大きなムーブメントになります。

「不同意性交等罪を作ってください」署名はこちらから

私たちが今すぐにできるアクション

 

<注目!>

#同意のない性交を性犯罪にオンラインデモ日程

 

3/7も、Twitterでオンラインデモが行われます!

性暴力によって人生の選択肢を狭められ続ける人をなくしたいです。

性暴力を、罪として認めてもらえないそんな社会を変えたいです。

ぜひシェアして、刑法改正検討会へ私たちの声を届けましょう。

 

※こちらの記事の内容は、刑法改正検討会議事録の内容を元にしています。

より正確な各委員の意見については、以下のリンクをご覧ください。

開催に当たって各委員から提出された自己紹介及び意見

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知識はやさしさ THYME.

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刑法性犯罪改正検討会の委員

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この記事を書いた人

性暴力被害に遭ってしまったとき、そしてその後、被害者が利用できる支援や被害回復について、サバイバーが発信しています。