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性暴力の証拠。警察に行けなくても残せる体制を全国に!27,893筆の署名と要望書提出

もしも性暴力被害に遭ったら

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9月16日、THYMEでは性暴力の証拠保全の問題、被害者の情報保護の問題について省庁に要望書を提出しました。要望書と合わせて、Change.orgで集めた27,893筆の署名も提出しました。沢山のみなさまのご賛同やサポートに心より感謝いたします。

目次

性暴力被害後に経験した法制度の課題についてプレゼン


当日は、まずTHYMEの側から30分、要望書提出の背景やワンストップセンターへのアンケート結果についてお話しました。
主に以下の内容です。

①証拠保全体制の地域格差と自身の経験の中で問題があった対応について

②THYMEがワンストップセンターに行った証拠保全に関するアンケート調査結果

③起訴状における被害者氏名匿名化について、起きている問題と運用の現状

④被害者の個人情報保護について、過去に起きた問題

⑤なぜ性犯罪での被害者情報保護が特に必要か?~性暴力加害者の認知の歪み、性暴力の証人の少なさ~

その後、要望書と署名を提出しました。

各省庁から、要望書の内容に関して回答

その後、各省庁の担当者の方々からそれぞれの要望について回答をいただきました。
以下、各省庁から共有された主な情報、回答、所感となります。

①証拠保全体制の地域格差に関する認識と実態調査を求めたことに関して(内閣府からの回答)

内閣府でもワンストップセンターの支援状況について調査を行っているので、引き続き項目を検討し、支援状況について調査をしたい。

 

②証拠保全体制に関わる予算編成について(内閣府からの回答)

証拠保全や急性期にかかった医療費には、各自治体に割り振られている交付金を利用できるようにしている。令和4年度の予算概算要求では4.6億円で提出している(※参考 概算要求のため、ここからさらに少なくなる可能性がある。令和2年度の実際の予算は2.4億円)。各医療機関への啓発パンフレット等も、その交付金を利用してもらうのがよいと考えている。

→この4.6億円は、52のセンターで割った額(1センターあたり年間約880万円)が各センターに割り当てられその中から被害者の医療費、啓発のための費用、センターの運営費、人件費に使われるという認識で合っているか?(THYME質問)

→割り当ては人口等も鑑みて各センターに均等に割り振っているわけではないが、そのような認識で合っている(内閣府回答)

→THYMEのアンケート調査からも、複数の自治体から「予算がない」、「保管先の冷凍庫などの設備がない」との声があがった。24時間体制での緊急対応ができる自治体も限られており、人件費もままならない状況である。1センターあたりの年間予算としてはまだまだ少ないと考えるので、被害実態を把握してより充実した支援が必要と認識してもらいたい(THYME要望)

 

③保全した証拠の「証拠能力」や証拠として扱うための制度について(法務省、警察庁からの回答)

証拠については、
マニュアルに沿って適切なかたちで採取されたものであれば採用される。「警察に申告のうえで採取された証拠かどうかは証拠能力に影響しない」(警察に申告のうえで採取された証拠であっても不完全なものであれば裁判で争うことになるのは変わらず、警察に申告していないことを理由に証拠能力が弱くなるということはない)

と回答がありました。

これは非常に重要です。THYMEが行ったアンケートでは、証拠保全体制が進まない理由として、「証拠として採用するための制度がないから」との回答も複数の自治体からありました。ですがこれは回答と照らし合わせると制度解釈の誤りといえるかもしれません。

制度がなくても証拠能力には問題がないとの省庁からの回答を、自治体にも共有をしたく存じます。

 

警察に申告する前段階での「早期の証拠保全」については、警察庁が2016年に主導で通達をし、自治体に証拠保全キットの配布を進めています。このことについて、「現在の達成率はどのくらいか」「いつまでに体制をととのえるという目標は設定しているか」と質問をしました。

警察庁からは

現在42の自治体に協力医療機関があり証拠保全キットを配布している(協力医療機関があるといっても都道府県内に1つというケースもあります)。引き続き、協力医療機関を増やせるように取り組みたい。いつまでにというような目標は定めていない状況。残り5の自治体についてはお伝えはできない」

と回答がありました。

しかし、THYMEが行ったアンケートだけでも9の自治体が「警察に申告がないと証拠保全ができない」と回答しており、警察庁の認識と現場の認識に違いがある可能性が浮き彫りになりました。

現にアンケートでは証拠保全の体制づくりに「警察からの協力が得られない」と回答している自治体もあり、いくつかの自治体では警察と支援センターとの間の連携がうまくいっていないように感じました。

当事者が警察に被害申告をした際の対応については

「これまでも何度も被害者の意思を尊重した対応をするよう通達をしている。被害届の受理についても、被害者から申告が遭った場合は原則受理するよう通達をしている

と回答がありました。こちらも、まだまだ被害届を受理されなかったという声もあり、現場に浸透していない問題を感じました。

 

被害者の情報保護不足により起きた再被害事例の実際把握について(法務省より)

要望書では、加害者の拘留中・受刑中・出所後に再被害として起きた事件の統計(件数や原因分析)の回答と被害者保護に関する提案を求めました。

再被害に関する件数の記録などは行っておらず、個別具体的な事案を調査・検討することは難しい。

との回答でした。
同じ加害者が同じ被害者に攻撃をする再被害という枠組みでの犯罪統計調査を行っていない(前科と紐づけて分析や記録をされていない)ことに驚きを感じました。1つ1つは個別事案であったとしても、傾向として「再被害」という犯罪類型はあるように思いますもしかしたら法務省ではない管轄で調査をしている可能性もありますが、課題や疑問が残りました。

 

被害者や被害者家族の情報保護と加害者の防御権に関しての見解

個別具体的な事案について意見を述べることはできないが、刑事訴訟法では加害者の防御権として「証人が加害者側の身近な関係者ではないかどうかは加害者が知る必要がある」としている。そのため、そのようなケースを除いて、証人の情報は保護されるものと理解している。

この回答から、加害者本人が被害者家族の情報を知っていた場合、この原則が守られず情報がいずれかの段階で漏れてしまった可能性も考えられると理解しました。

 

 

質疑にて

3名の国会議員の方が寄り添ってくださいました。

今回の要望書提出には、日本共産党の

・本村伸子衆院議員

・仁比聡平参院議員

・山添拓参院議員

が出席くださいました。

8月初旬に本村議員、山添議員が直接お話を聞いてくださり、臨時国会が始まる前に要望書を提出しておけると、省庁も国会質問に備えて動いてくれる可能性が高まるとのアドバイスをいただき、今回の要望書提出へと繋がりました。
その後本村議員とお話合いを重ね、要望書の内容についてもご確認、アドバイス、提出までの調整など手厚くサポートをくださり、大変感謝しております。
省庁からの回答の後も、議員のみなさまがさらに追及をしてくださいました。

被害当事者が自らアンケート調査まで行い、内容としても説得力のあるもの。内閣府としても調査はできるだろう」と意見くださり、省庁の担当者の方から「きちんと持ち帰る」との回答を引き出してくださいました。

また、「今回の要請を極めて重いものと捉えている。被害当事者からここまでの要請が出てくる状況を放置してはいけない。引き続き対応を続けていくといっても、現場で被害者から見えている景色はこのように酷いものなのが現状。今回の要請をどのように捉えているのか一人ひとり言葉にしてほしい」と言ってくださり、回答に加えて各担当者からの意見を引き出してくださいました。

 

THYMEとして嬉しかった点は、内閣府のご担当者の方が「元々THYMEの活動を認知していた」とおっしゃっていたことです。
政策に関わる方が認知していることは大きいと思います。今後に向けての繋がりもできたのではないかと考えています。

今回の要望書・署名提出は提出してすっきりするためのものではなく、課題の認知してもらうためのスタートなので、今後も動きを見ながらアプローチをします。

メディアも取材に

以下、取材くださったメディアと記事一覧です。
性暴力に関する報道において、きちんと取材ルールを遵守し、センセーショナルな被害内容ではなく法制度の課題に関心を持ってくださったメディアの方々、ありがとうございます。

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知識はやさしさ THYME

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この記事を書いた人

性暴力被害に遭ってしまったとき、そしてその後、被害者が利用できる支援や被害回復について、サバイバーが発信しています。