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あなたもレイプ神話を信じてない?セカンドレイプから考える、性暴力への間違った社会認識

もしも性暴力被害に遭ったら

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※こちらの記事は、性暴力の実状に関して、まだ良く知らないという方に向けた記事です。セカンドレイプにあたる言葉の例が挙げられますので、被害に遭われた方や気分を害される可能性のある方は閲覧を控えてください。

 

目次

セカンドレイプとは

 

今までに何らかの被害に遭った人に対して、「そんなところにいたあなたが悪い」「どうして〇〇しなかったんだ」などというような言葉を言ってしまったこと、またはそういった言葉がかけられているのを耳にしたことはありませんか?

 

被害者に対して、上記のような追い打ちになる言葉をかけることを、セカンドレイプと言います。
性被害に関しては、実状と社会の認識に乖離があり、正しい認識がされているとは決していえない状況です。
見た目や様子でぱっと分からなくても、被害者は動揺していたり、被害に遭ったことで深く傷ついています。

そんな被害者にセカンドレイプを行ってしまうことは、被害者がその後に誰かに相談できなくなったり、怒りや悲しみなどの「正当な感情」を出せなくさせてしまいます。
多くの被害者が、被害そのものだけでなく、周囲や社会の無理解によって深い傷を負っています。

 

 

被害者はあなたが思っているよりも身近なところにいます。
被害を相談したり打ち明ける側は相手を選ぶので、普段の考え方で性被害の傷に寄り添ってくれないだろうと思われる相手や関心を持ってくれない相手には、家族や友人であっても被害を相談しないことが珍しくありません。

 

日本では13人に1人が同意のない性行為の被害を受けたことがあるというデータもあり、性暴力は決してあなたの遠いところで起こる問題ではありません。
もしあなたの周りに性暴力被害に遭った人はいないというのなら、被害者はいないのではなく、「あなたから見えていないだけ」です。
普段一緒に仕事をしたり、関わっている人にも被害経験があるかもしれません。
日常生活の中で何気なくした発言が、意図せず隣にいる人を深く傷つけるおそれがあります。SNS上での発言にも注意が必要です。

 

また、セカンドレイプは必ずしも明確な悪意を含んだ発言ではありません。
一見、被害者を思って何気なく言った言葉でも、セカンドレイプになってしまうことがあります。
受けたセカンドレイプは、被害者の心に深く残る傷です。
「知らなかった」ことによって、信頼関係が大きく崩れることはお互いのためにも避けたいですよね。
誰もが被害者にも加害者にもなりうる問題だからこそ、性被害に関する現実と社会が持っているイメージが全く違うことを知り、尊重しあえる関係を築くことが大切です。

 

セカンドレイプの背景にある「レイプ神話」

 

セカンドレイプはなぜ起こってしまうのでしょうか。
その背景には、「レイプ神話」というものがあります。

 

レイプ神話の例

 

 ①加害者は被害者と面識のない人だ →性暴力のほとんどは顔見知りによる犯行

 

 ②被害に遭うのは夜の暗い道を歩いていたからだ →安全であるはずの場所で、知り合いから被害に遭う

 

 ③被害者は突然襲われる →加害者は計画的に被害者を追い込む

 

 ④被害者は露出の多い恰好をしていたから狙われた →被害に服装は関係ない

 

 ⑤嫌なら抵抗できたはずだ(抵抗すれば逃げられたはずだ) →「殺される」恐怖で動けない

 

 ⑥被害に遭うのは、若い女性だけだ →年齢関係なく被害に遭う、男性も被害に遭う

 

 ⑦加害者は性的衝動を抑えられないものだ →加害者の犯行は衝動的ではなく計画的。必ずしも動機は性欲ではない

 

神話と言われる通り、上記の内容は全て偏見であり、性暴力の実状と大きく異なります。
私たちの社会では、このような間違った認識の「レイプ神話」が広まっていて、それを基に出来事を判断してしまいがちです。

 

また、セカンドレイプの背景には「公正世界仮説」というバイアスが関わっているとも言われています。
公正世界仮説とは、悪い行いをすれば悪いことが起き、良い行いをすれば悪いことは起きないといったような、予測のできない出来事に対し理由や平等性を求めるバイアスです。(もちろん起こる出来事に平等性はありません)
ショッキングな出来事等に関して、それが起こった原因を被害者に転嫁することで、ショッキングな出来事が自分にも起こるかもしれないという不安から目をそらす考え方です。

 

被害者に悪いところがあったと思い込んだり、被害者を責めることで、「被害者と違う行動をしている自分は大丈夫だ」という安心を得たい心理があるかもしれません。
セカンドレイプをしても”思い込みの間違った安心”は得られるかもしれませんが、実状は何も変わりません。
それ以上に、あなたが被害者に更なる傷を負わせる加害者になってしまうだけでなく、加害者の非を見逃し、結果的に性暴力が起こりやすい、性暴力を許してしまう社会を作る側になってしまいます。

 

セカンドレイプにあたる発言パターン

 

明確な悪意を含んだ発言のみがセカンドレイプにあたるわけではありません。
一見、被害者を思って何気なく言った言葉でも、セカンドレイプになってしまうことがあります。
気を付けなければしてしまいがちなセカンドレイプの例から、それぞれの発言の問題点を見ていきましょう。

 

①被害者の行動や特性を被害に結び付ける

 

・夜に一人でいたのが悪い

被害のほとんどは、安全であるはずの場所で、信頼しているはずの顔見知りによって為されます。
夜に知らない人に突然襲われたとしても、時間帯も帰宅時間の決して遅い時間でもなければ、場所も普段使っている通勤通学路がほとんどです。
被害者が責められるような点は何もありません。

周囲が簡単に思いつくような自衛は既に為されていますし、それでも被害に遭う現状がある中で、これ以上自衛を求めても解決にはなりません。
悪いのは100%加害者です。
「少しでも被害を防ぐためにできること」を探し求めるならば、それは被害者に言うのではなく、自分自身や社会の目に求めましょう。

 

・そんな恰好をしていたのが良くない

性暴力加害者への聞き取りで、被害に遭うことと「被害者の服装」には関連がないことが分かっています。
加害者は服装で被害者を選んでいるわけでもなければ、性暴力の動機自体も、必ずしも性欲からというわけではありません。
加害者の身勝手なストレス解消や支配欲が性暴力の主な動機といわれています。

もちろん、露出が多い恰好をしていることが「性的同意」になることはありません。

 

・普段は性的に奔放じゃないか

被害にあった人が性的に奔放だったとしても、それを理由に性暴力の被害に遭ってもしょうがないなどということはありません。
性暴力は「性的自己決定権」に対する大きな侵害です。
性を楽しむのも、いつ、誰と性行為をするのかも、すべて個人の自己決定権です。
どのような人、どのような間柄の人でも、同意のない性行為は性暴力にあたります。性暴力は個人の自由権と尊厳を深く侵害する罪です。

 

②被害者の被害時、被害後の行動を責める

 

・抵抗すればよかったのに。つよく抵抗しなければ同意と思われても仕方ない。

被害時、人間にはフリーズ反応(凍り付き)が起こります。
これは命の危険や衝撃的な出来事の際に起こる極めて自然な反応です。被害に遭って抵抗ができる人は1割もいません。

 

・相手を勘違いさせたあなたにも原因があるのでは

どっちもどっち論は通用しません。同意がないことはそのまま同意がなかったことなのです。
性暴力のほとんどは社会的な上下関係の中で起きます。
加害者は、上司、先輩、指導者、保護者など、被害者が断ったり抵抗しにくい関係性や立場を利用します。
被害者が抵抗しなかった(正確には抵抗できなかった)ことを理由に、明確な同意がなくても許されるなどということはありません。

本気で抵抗しなかったのなら嫌がっていたわけではないというのも、大きな勘違いです。
「NO」の意味はそのまま「NO」です。

お酒を飲みに行ったから。部屋に行ったから。部屋に呼んだから。キスをしたから。
これらはすべて、性行為をすることへの同意にはなりません。

悪いのは犯人だけど、被害者も…という考え方は、決して「中立」などではなく、明確に加害者側の味方をする発言です。
被害者の口をふさぎ、犯罪行為の隠ぺいに加担する重大な行為です。
余計に被害者を追い込むだけの結果になってしまいます。

 

・なぜすぐに警察へ行かなかったんだ

警察に行くことは、かなりの勇気がいることです。加害者に脅されたり、口止めをされるケースも多いでしょう。
加害者が普段の生活で接している人ならば尚更、警察に通報するハードルは高いです。

また、被害者の年齢や状況によっては、被害に遭ったことを認識するまでに、とてつもなく長い時間を要します。
10年以上経って被害を認識する人や、体調がずっと優れない原因を辿っていった結果、数年前の性被害が原因で精神疾患になっていたと分かる人もいます。

現状の制度や社会の認識不足の中で、すぐに警察に行き、証拠を揃え、加害者を裁くのは、非常にハードルの高いことなのです。

 

③被害者の感情を無視、否定、強制する(感情へのアドバイス)

 

・もう忘れなよ。いつまでも暗くいるよりも明るいこと考えようよ。

励ましのつもりのこのような言葉も、被害者の感情を無視してしまう言葉のひとつです。
被害者は忘れられるならば忘れたいと思っています。性暴力のような犯罪被害の記憶は、通常の記憶と大きく異なります。
衝撃的なトラウマ記憶として、脳や身体に影響を及ぼす「治療が必要な記憶」です。
忘れられずにフラッシュバックの症状に苦しむ被害者も大勢います。

明るく前向きに過ごしたいと本人が一番望んでいます。
被害回復はそれぞれが自分のペースでしていくものであり、早くしなければならないものでも、早くできるものでもありません。
嘘の付けない「感情」を否定されたり、決めつけられることほどつらいことはありません。

 

・感情に任せて怒ってしまう、被害者の感情を置いてけぼりにしてしまう

これは難しい問題で「気づきにくい」セカンドレイプです。
被害者のことを大切に思っている人ほど、してしまいがちです。

被害の事実を知ると犯人に対し強い怒りを覚え、「許せない」と犯人を自分の手で攻撃したくなるかもしれません。
しかし、被害者の前で強く動揺し感情を露わにしてしまうことは、被害者に自責の念を持たせたり、現状認識と感情のギャップを大きくしてしまいます。

被害からあまり時間が経っていない時は、被害者はまだ現状の整理ができていない状態です。
その中で周囲の人が怒りや悲しみをあまりに強く出すと、被害者は自身の感情と認識が周囲に追いつかなくなってしまい、孤立感や疎外感を持ってしまいます。
犯人に怒りを向けるより先に、まずは冷静に目の前の被害者に向き合い、話を聞くことが大切です。

 

・被害者の感情を決めつけてしまう

被害者は被害直後は感情が麻痺しているケースが多く、涙が出なかったり、恐怖からの防衛機制で笑ってしまったり、加害者への恐怖から加害者に怒りを感じることができなかったり、といった状況になります。
そのため周囲からは妙に落ち着いて見えたり、何を考えているのか分からなく感じるかもしれません。

そこで「どうして怒らないのか」「なんでこんな状況で笑えるんだ」ということをぶつけてしまうことは危険です。
被害者の中では感情の防衛機制が働いています。
感情がないように見えたり、普段とは反対の感情の表れが出てきてしまうことは、被害者が受けた衝撃を物語っています。
第三者が感情的になり被害者に対して感情を押し付けてしまったり、被害者の気持ちを分かったように「代弁」してしまうようなことは、被害者に負担や抵抗感をもたらします。

「気持ちが分かるよ」といった発言にも注意が必要です。
「自分の感情を分かったように言われたくない、そんな単純じゃない」というのは誰もが感じることではないでしょうか。
無理に言葉をかけなくても、被害者の話を聞くことが寄り添いにつながります。

 

④被害を疑う

 

・勘違いだったんじゃない?冤罪じゃない?

 仮に幸い勘違いだったとしても、その時恐怖感、不快感をその人が感じたことは事実です。
その怖かった、嫌だったという感情を否定せずに、話を聞くことが重要です。

そして「冤罪だったら…」という心配は、被害事実とは全く別の話です。
被害者の証言のみで有罪になることはありませんし、そもそも「冤罪が起きた際の責任」は警察にあります。被害者にはありません。

被害者に対して冤罪の話を持ち掛けることは、全く意味をなしません。
冤罪の心配を被害者に対してしてしまう人は、自身のその感情や不安感がどこから来るのかを振り返ってみる必要があります。
冤罪をなくしたい人は、被害者ではなく、警察に対して対策を訴える活動を続けましょう。

 

・加害者擁護「あの人がそんなことするはずない」

 加害者が知っている人や共通の知り合いであったりすると、信じられない気持ちから「あの人がそんなことをするはずがない」「良い人なのに」などと加害者の擁護をしてしまう危険があります。
加害者のことを「信じていたのに」「あの人がどうして」ということは誰よりも被害者がいたく感じています。
「良いところもあるし」「自分がこのことを言ったらどうなるのだろう」ということも、誰よりも被害者が抱えて苦しんでいます。

自分の中の常識を壊された気分から、加害者擁護をし、被害者の口を塞ぐことは重大なセカンドレイプに当たります。

加害者が自分の信頼している人であると、動揺する気持ちも信じたくない気持ちも悲しい気持ちもあるでしょう。
でもそういった気持ちにさせたのは誰でしょう?
そういった行為を犯した他でもない「加害者本人」ですよね。被害者ではありません。

あなたを裏切ったのは加害者です。
あなたも信頼を裏切られ、加害者から悲しい気持ちにさせられた被害者とも言えます。
被害に遭った人は何も悪くありません。加害者に裏切られた悲しみを被害者に向けることは、無責任な「転嫁」です。

 

⑤被害者像を押し付ける

 

・意外と元気だね

 自分の偏見で被害者のイメージを押し付けてしまう人もいます。
被害者はつらいからこんなことできないはずだなどという言説まで耳にします。

被害後、いつもと同じように生活をできる人もそうでない人も、いろいろな人がいます。
目に見えない深い傷をつけられるのが性被害です。
傷が「自分からは見えない」、自分のイメージしている被害者像と違うという理由で、大した被害じゃなかったんじゃないか、嘘なんじゃないかなどとまで思ってしまうことに重大な問題があります。

現実とイメージ、レッテルは異なります。
被害者はあなたの理想やイメージに沿って行動する「モノ」ではありません。
複雑で深い感情と思考を持った一人の人間です。他者は自分が考えているほど単純ではありません。

 

・被害者は笑えるわけがない

 近年、このようなセカンドレイプが多くされていました。
被害者の行動や感情を評価しようとする視線自体が、酷く加害的なものです。まずはそのことも理解しなければなりません。

前にも書いたように、衝撃的な被害に遭うと、感情が麻痺した状態になります。
防衛機制によって「何ともなかった」と思い込んで、普段と同じように振舞うことは、何らおかしくない反応です。
悲しい出来事に対して、四六時中ずっとずっと泣いていることはありません。
被害に遭っても、徐々に回復しながら、笑って幸せに生きる権利があります。当たり前のことです。

被害に遭ったなら笑えるわけがないなどというのは、まるで被害者の回復やこれからの人生を第三者が否定するような暴力的な偏見です。

 

⑥被害を過小評価する

 

・もっと大変な人がいるよ

痛みは比べられるものではありません。性暴力被害のケースも、人によってそれぞれです。

誰かと比べることで被害者の傷が癒されることはありません。
比べることによってむしろ、被害者も自身の被害を過小評価し「もっと大変な人がいるのだから自分は声を挙げてはいけないのではないか」と、自責の念に追い込んだり、被害者の口を塞ぐ結果となってしまいます。

 

セカンドレイプをしてしまう人にも、心理的課題がある可能性

 

 

上記に挙げてきたセカンドレイプは、誰もがしてしまう可能性があります。
感情が不安定になっているときや、自分の身近な人が当事者になり衝撃が大きい時などは、セカンドレイプをしてしまう危険も高いので、気をつけなければなりません。

事実を受け入れる力がないことは、責められることではありませんが、それを理由にセカンドレイプをしていいことにはなりません。
事実を受け入れられない、被害者に当たってしまいそうなときは、その人自身も心理的問題を抱えていることがあります。

身近な人が被害に遭ったなど、衝撃的で自身にも余裕がないと感じた時は、問題と距離をとることも時には必要です。
無理をして被害に遭った方を傷つけてしまう前に、被害当事者に寄り添う立場の方も、休むことを意識することが大切です。
被害当事者の家族やパートナーが相談することができる支援機関もありますので、一人で被害に遭った人を支えようと無理をするのではなく、話を聞いてもらったり、複数の人たちで支えあいながら寄り添っていくことが大切です。

 

 

※この記事は性暴力被害当事者が個人で書いているものです。当事者として自身の経験をもとに書いていますが、当事者それぞれの被害、状況は異なります。「これが正しい」と確証するものではありませんので、ご注意ください。

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ーーーー知識はやさしさ THYME.



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性暴力被害に遭ってしまったとき、そしてその後、被害者が利用できる支援や被害回復について、サバイバーが発信しています。