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休職・離職をした人が「働ける分だけ働く」しごとの間借りプロジェクトとは。NIMO ALCAMO 古市さんに聞いた

カレー店「nimo alkamo」

もしも性暴力被害に遭ったら

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性暴力被害のその後の影響の1つとして、PTSDになったり適応障害になったりといった「今までしていた仕事ができなくなる」経験があります。
そのことで休職・離職をしたとき、またその後の社会復帰のとき、フルタイムで働くことのハードルを感じる人はとても多いと思います。

そのような課題を解決しようと、休職・離職をした人が ”働ける分だけ働く”、“いつ来ていつ帰ってもいい”、そんな働き方を実現しようと始まったプロジェクトがあります。
その名も「しごとの間借りプロジェクト」
この取り組みを始めた一般社団法人NIMO ALKAMO(ニモアルカモ)の古市邦人さんにお話を聞きました。

目次

しごとの間借りプロジェクトとは

しごとの間借りプロジェクト

「しごとの間借りプロジェクト」とは、適応障害やうつなどさまざまな理由で仕事を休んでいる・離職をしたという人が、キャリアサポートを受けながら働ける分だけ働くプロジェクトです。

このプロジェクトを始めた一般社団法人NIMO ALKAMO(ニモアルカモ)の古市さんは、長年就労支援の場で働いてきました。
ハラスメントや長時間労働など、さまざまな理由により体調を崩し休職・離職した人たちは、いきなり決まった時間に仕事をすることに不安を抱えていました。
そのような人たちの社会復帰までの様子を見る中で、古市さんは「負荷の低い状態で仕事を試し、そこからキャリアを考える機会」が社会に少ないことに課題を感じます。

“ボランティアとアルバイトのあいだくらいの働き方があればいいのに”
そのような思いから、リワークのきっかけづくりとして「しごとの間借りプロジェクト」が始まりました。

最初の挑戦は7人から。かき氷店とバターカレー店を立ち上げ

2022年6月にスタートしたプロジェクトには、7人の休職・離職中のメンバーが集まりました。
2つのチームに分かれて、それぞれかき氷とバターカレー、魅力的なお店をゼロから立ち上げ。
昨年8月~10月に週1回、期間限定営業をしました。

台湾かき氷専門店「空白冰菓店」

空白冰菓店の台湾かき氷

「空白冰菓店」の名前には、
・スタッフがキャリアの空白期間を有意義に過ごしてほしい
・お客さんにも忙しい日常から離れて楽しんでもらいたい
という意味が込められています。

バターカレー専門店「休息日のバター」

休息日のバターのバターカレー

「香りにつつまれる幸せ」をコンセプトにしたお店。
バターチキンカレーとパラタ(インドのデニッシュパン)をセットにしたこだわりの1メニューで勝負。
お店に入った瞬間、幸せなバターの香りにつつまれます。

新しい働き方のルール、どんなもの?

代表の古市さんは、一般社団法人NIMO ALKAMOとしてだけでなく、同じ「nimo alcamo」というカレーのお店を大阪で経営されています。
そこは多様な働き方を受け入れ、作る場所。

カレー店「nimo alkamo」

お店では日々、一人ひとりが無理なくそのままの状態で働ける仕組みづくりを続けています。
そのために、NIMO ALKAMOでは週1日のシェアワークを実施。
本来ワンオペが求められてしまう店舗の営業を、3〜4人でシェアして働きます。

仕事をシェアすることで報酬は少なくなりますが、離職中で少しずつ社会復帰を目指したい人にとっては収入よりも「つながりと自信」が必要なことがあります。
無理をせずに週1日働くだけでも、そこがその人にとって居場所の1つになるのです。

「仕事を辞めてしまってから、わたしは恥ずかしかった」

古市さんには、印象に残っているメンバーの言葉があるといいます。
それは、「仕事を辞めてしまってから、わたしは恥ずかしかった」という言葉。
頑張ってきた結果体調を崩してしまったにも関わらず、休職・離職中の人はつよい孤独や後ろめたさを感じていました。

でも、しごとの間借りプロジェクトでほかのメンバーと企画をし、お店を立ち上げていくことを通して、NIMO ALKAMOというコミュニティがその人にとって「家族や友人に今の自分の仕事を、今頑張っていることを見てほしいと思える」そんな環境になったのです。

しごとの間借りプロジェクトの様子

休職中は人との繋がりが減って、社会から遠く離れてしまったようなそんな孤独な気持ちになります。
こういった場から、また人との繋がりによって力をもらうこと、今の自分を肯定できることはとても大きいことだと思いました。

THYMEが「しごとの間借りプロジェクト」を応援したい理由

休職・離職という経験は、性暴力被害にあった人にも”その後の影響”というかたちで降りかかる課題です。
筆者である私自身も、性暴力被害に遭った後、1年半近く休職・離職をした状態でした。

社会復帰のうえでは、
・朝早く起きなければいけない
・決まったときに、安定して出社しなければいけない
・裁判や手続きで休んだりするのにも、心痛のなか上司に理由を話して周囲と調整しなければいけない
という課題がありました。
そして、これらを上手くこなせなければ周囲との軋轢が生まれてしまう…そんな不安があり、なかなか社会復帰に踏み切れませんでした。

当時の私にとって社会復帰は、「0か100か」のような選択でした。
全く動けないような期間が過ぎて、だんだん回復してきて、でも沢山の人に時間を合わせて仕事をするまでにはハードルが高い。そんな期間はとてももどかしかったです。

50で頑張る選択肢がなく、完全に回復するまでは自信がなければ踏み出せない。
1年以上ぶりに自分でお金を稼ぐことができたときは、やっと…という感じで嬉しかったことを覚えています。

「シフト制のアルバイトをしたらいい」と思う人もいるかもしれません。
でも、体調が不安定な状態にある人は「先の時間に安定して出勤する」という保証をすることが、それだけでも負担だったりします。
また、キャリアという観点で見たときに「自分の得意や好きを活かして働く」「自分の貢献部分が見えやすく、それによって何かをかたちにする」ことは、個人に自信をもたらす面でも重要です。

自身の経験から、NIMO ALKAMOさんのブランドや店舗を立ち上げる経験を通して社会復帰をしていくプロジェクトは、私にとって素敵にうつりました。

「しごとの間借りプロジェクト」 新たな挑戦

しごとの間借りプロジェクトは、今新たな挑戦を始めています。
新たなブランド「Talk with _」(トークウィズ)の立ち上げです。

Talk with _のチャイ

Talk with _は、”休んでいるメンバーがつくる、休むためのチャイ”。
生活や仕事に追われ疲弊する時期を経験したメンバーが、あのときどんな時間が欲しかったかを話し合い、「すこし、休もう。話をしよう。」がコンセプトになりました。

24時間いつ来ていつ帰ってもいい。シフトフリーを実現するために。

NIMO ALKAMOがこれからTalk with _で実現したい新しい働き方の1つは、シフトフリーの働き方。

「うつや心身・家庭の状況などで出勤が不安定になってしまう」
「1週間後の決まった時間に起きて家を出られるか分からない」

そういう不安を抱える人でも不自由なく働くには、シフトというルールをなくしてしまえばいい。
そのシフトフリーを実現できる仕事の1つが「ものづくり」でした。
Talk with _のチャイを作る工房は、今年の春に大阪北加賀屋にオープン予定です。

Talk with _クラウドファンディング

現在このチャイギフトブランド立ち上げのためのクラウドファンディングを実施中

プロジェクトのみなさんが作るチャイを、いち早く楽しめる魅力的なリターンも。
ご自身でも、友人や家族へのプレゼントでもおすすめです。
いつも頑張っている大切な誰かへの贈り物としていかがでしょうか?

クラウドファンディングは【2/23(木)】まで。
以下からぜひ詳細をご覧ください。

さまざまな事情で、限られている働き方のルールでは就業が難しい人が、無理なく働いて、いろんな人とのつながりを安全な場所で再形成していく。
新たな一歩を踏み出しやすくする。
そういった環境が増えるといいなと思いました。

新しい働き方を作るNIMO ALKAMOさんの取り組みを、THYMEは応援しています。
大阪でお近くの方は、ぜひ「nimo alkamo」のお店にも立ち寄ってみてください。

 

お話をお聞きしたのは…
古市邦人さん

古市邦人さん

Profile
一般社団法人NIMO ALCAMO 代表理事
キャリアコンサルタント、公認心理師、カレー屋店主
2010年に大学卒業後、公文教育研究会(KUMON)へ入社。その後2013年にNPO法人HELLOlifeへ入社。事務局長として、地域若者サポートステーションの総括コーディネーターや、大阪府が運営する「OSAKAしごとフィールド」の運営責任者など、就労支援に関わるプロジェクトディレクターを歴任。既存の就活の枠組みにとらわれない様々な就活方法、働き方を探求・提案する。2020年に独立し11月に一般社団法人NIMO ALCAMOを立ち上げ、多様な働き方を生み出す「しごとの間借りプロジェクト」などを実施中。
現在クラウドファンディングでチャイ店「Talk with _ 」の資金集め中。

 

 

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この記事を書いた人

性暴力被害に遭ってしまったとき、そしてその後、被害者が利用できる支援や被害回復について、サバイバーが発信しています。