性暴力被害に遭った際に、様々なサポートをしてもらえるワンストップセンター。しかし、ワンストップセンター側の対応にも、不信感を持ってしまったり、被害者にとって負担になったり傷つくことがあります。
被害者支援に関わる人や、被害当事者同士でさえも、一人ひとり状況が違うので、無自覚に傷つけてしまうこともあります。
少しでもこういったことを減らすために、今回は支援者や被害者の周囲の人への要望として、当事者視点で対応改善の要望をまとめます。支援者の方の目に止まれば幸いです。
目次
当事者が処罰感情を出せていなくても、今後のために証拠だけでも残しておく支援をお願いします
被害に遭った人から相談があった際、「警察に届け出る意思はありますか?」と確認するかと思います。
そのとき被害当事者が「警察には行けない」と言ったとしても、それは警察に行った後どのような手続きがあるのか分からない故の不安であったり、被害直後でとてもそんなことは考えられない状況にあるからということがあります。
被害に遭った人が加害者にきちんと責任を取ってほしいという気持ちになるまでには時間がかかります。
今すぐに警察に行けなくても、時間が経って今なら行くことができそう、やっぱりなかったことにしたくないという気持ちになったときのために、警察に被害申告を今すぐにしなくても証拠だけでも残しておくことができることを伝えていただくようお願いします。
被害から時間が経っていない相談者に対しては、「警察に行かなくても証拠を残すことができる」案内をお願いします。
法務省からも医師によって適切に採取されたものであれば、証拠能力として問題はないと回答があります。
警察への同行支援をお願いします
被害に遭った方が警察へ行くとき、一人ではなくワンストップセンターの支援員がいるだけでも対応が大きく変わります。
可能でしたら、相談者が一人で警察に行かずに済むことが望ましいです。
被害に遭った方が警察でも何度も同じする負担を避けるために、ワンストップセンターで聞き取りをした内容を紙にまとめて、そちらを窓口で対応にあたった警察担当者に渡すようにすると少しでも被害者の負担を減らすことができます。
THYMEでは「被害状況入力フォーム」を用意しています。
記入した内容をPDFで出力可能です。相談者への聞き取り項目としてもご利用ください。
事件管轄の警察署が遠方で同行支援が難しい場合は、相談者の方に警察に行く際の以下のポイントをお伝えください。
・自宅最寄りの警察署ではなく、被害が起きた現場を管轄している警察署に行く
ex) 東京都に住んでいる人が大阪に出かけた際に被害に遭った場合、大阪の警察署に行きます
・事前に警察署に電話をして、女性の警官(同性の警官など希望に沿った担当者)に担当してもらうようにお願いする
・警察署に行く時間を事前に決めて警官に待機してもらう、プライバシーが守られ落ち着いて話せる場所を用意してもらう
・被害内容や状況をまとめた紙を持っていくと少しでも負担が少ないこと
・被害届は原則受け取らなければならない通達が警察署にはされていること
∟被害届受理を拒まれた場合は、こちらの記事の内容も参考にいただけますと幸いです
・上記の対応をしても被害届受理を拒まれた場合は、センター連携の弁護士へ繋いでいただけますと幸いです。
被害者の懸念や心配をはぐらかさないでほしい
被害者は非常に怖い経験をしています。ASDやPTSDの症状の1つでもありますが、被害に遭ったことで、様々な事柄に対して心配や恐怖がつよく湧いています。第三者からは必要以上に心配をしているように見えるかもしれませんが、被害者にとっては、命や身の安全に関わる恐怖です。
“加害者に居場所を知られるかもしれない””加害者に報復されるかもしれない”という恐怖に対し、「そんなに心配しなくて大丈夫」と軽くあしらわれてしまうことで、被害者は自分の恐怖に寄り添ってもらえていない、状況を正しく認識してくれていないと不信感を持ってしまいます。
動揺している被害者を安心させるためには、被害者が不安を吐き出し切っていない段階で焦って「大丈夫」と伝えるのではなく、被害者が心配している事柄を最後まで聞き、その気持ちに寄り添ってから、「安全であること、大丈夫であることの根拠」を共に確認することが大切だと考えます。
「今は、ここは、安全だから大丈夫」伝えられている内容は同じでも、話のペースの違いや根拠を落ち着いて確認していくだけで、被害者側に与える印象が大きく変わります。
「何か心配なことはありますか」「それは怖いですね、心配ですね」
「鍵をかけていれば入って来られないから大丈夫」
「今までのケースや加害者心理からも、簡単に報復はできない」
「裁判中や出所後も、被害者側を守る制度がある」
個人情報について、必要最低限以上のことを聞かないでほしい
(聞く場合は、なぜ必要なのか、どう自身のためになるのかを教えてほしい)
被害者は非常に怖い経験をしているため、個人情報は必要最低限以外伝えたくない状態になっている場合もあります。中には身の安全の心配から、居場所を知られたくないという想いを強く持っていることもあります。
筆者の場合は、ワンストップセンターに電話をした際に住所を聞かれ、不安な気持ちになりました。その後、住所の情報は特に使用されなかったため、必ずしも必要な情報ではなかったようです。
加害者からの報復も恐れていた状態だったので、被害者の情報を何か聞くときはその場で必要な理由も合わせて確認してもらえると不安が軽減されます。
被害者の悩みを比較したり矮小化しないでほしい
被害者の悩みはそれぞれですが、被害の重さやケースを比べることはセカンドレイプに繋がります。
・仕事の心配をしている人
・家族等周囲の人との関係を心配している人
・心身の安全を心配している人
・精神的に先のことなど何も考えられない状態にある人
被害者の状態は様々です。
励ます意図の発言でも、悩みをほかのケースと比べられると被害者は寄り添ってもらえていないように感じてしまいます。
ここまで、筆者の経験から支援者の方に今一度振り返ってほしい事柄を挙げました。
悲しいことに被害当事者からは、頼れるはずの支援者の発言で傷ついたという声も聞かれます。
少しでもそのようなことが減るよう、当事者として改善していけることを今後も発信していきます。
.
.
.
.
.
知識はやさしさ.